軌跡
8話
―パリ―
「類?聞いてるの?」
静はぼんやりしている類に切なげに笑いながら話しかけた。
「ん・・・聞いてる」
「あなたまだパリにいる気?私はもうこんな茶番付き合う気ないわよ?」
「茶番って・・・」
「あら、違うかしら。あの日、私の前に現れた類は今にも死んでしまいそうな顔をして
つくしちゃんのためだからと言って私と暮らし始めたのは茶番でしょう?」
「・・・嘘はついてない」
「まぁ世間は一緒に暮らしてるとなれば恋人とみられるわよね。
そんなこと類もわかってたでしょう?
私のことは考えてくれてなかったの?」
「別に。今その話して何か生産性あるの?」
「類・・・あなたどうしたいの?
つくしちゃんのためだって言うから黙っていたけれど
司から電話がきて烈火のごとく怒ってたわよ?」
類は長い睫毛を伏せて顔を曇らせた。
「俺ね、傍にいれば牧野を幸せにできると思ってた。
だけど苦しいんだよね。
お互いに息苦しいんだと思う。
牧野も俺も好きすぎてどこか遠慮してさ。
気付いたら牧野が遠くに感じて
もうどうにもならないくらい遠くて
そう思ったら何を話せばいいか分からなくなって
牧野が、会社のだれかと親しげに笑って話してる姿を見たら
俺じゃなくてもいいんだって気付いたんだ。」
静は呆れたようにため息をついて類を諭すように口を開いた。
「ねぇ類、好きだけじゃ何も始まらないわよ。
お互いぶつかり合って分かり合って
そうやって理解していかなくちゃ。
それともそんな簡単に諦めれるほどの想いだったの?」
「静には分からないよ。
手にすれば壊れてしまいそうな・・・
そんな俺たちの関係。
静にも司にも分かりっこない」
そう言うと類は席を立って静に背を向けた。
「類・・・。」
バカな子。
つくしちゃんのためって言うけれど
きっとつくしちゃんの心が離れていくことに耐えれなくて
逃げ出してきたのよね。
カフェオレを飲みながら静は物思いに耽った。
あの日・・・パリのアパートのドアの前に立つ類の姿を見た時
心臓が止まるかと思った。
生気を失くした死人のような瞳で佇んでいた類。
どうしたのか尋ねても答えず
ただただ空を見つめるだけで
そっとしておいた。
ぽつりぽつりとこぼす言葉は
つくしちゃんへの溢れる想いと
壊れそうな類の心。
つくしちゃんが幸せになれるよう
自分はつくしちゃんの元から離れることを選んだって言ってた類は
微笑みながらまるで泣いてるようだった。
私は・・・
正直、このまま類がつくしちゃんを忘れて昔みたいに
私に心寄り添ってくれたならと思ってた。
邪な考えをしてる自分に苦笑するほど
私は類を想っていたのね。
そう気付いたから・・・
だから今はちゃんと類の背中を押して
つくしちゃんとどうなるにしてもけじめをつけて欲しくて
私は自分の気持ちは類に告げずにいるけれど
本当は私も辛いのよ。類・・・。
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「類?聞いてるの?」
静はぼんやりしている類に切なげに笑いながら話しかけた。
「ん・・・聞いてる」
「あなたまだパリにいる気?私はもうこんな茶番付き合う気ないわよ?」
「茶番って・・・」
「あら、違うかしら。あの日、私の前に現れた類は今にも死んでしまいそうな顔をして
つくしちゃんのためだからと言って私と暮らし始めたのは茶番でしょう?」
「・・・嘘はついてない」
「まぁ世間は一緒に暮らしてるとなれば恋人とみられるわよね。
そんなこと類もわかってたでしょう?
私のことは考えてくれてなかったの?」
「別に。今その話して何か生産性あるの?」
「類・・・あなたどうしたいの?
つくしちゃんのためだって言うから黙っていたけれど
司から電話がきて烈火のごとく怒ってたわよ?」
類は長い睫毛を伏せて顔を曇らせた。
「俺ね、傍にいれば牧野を幸せにできると思ってた。
だけど苦しいんだよね。
お互いに息苦しいんだと思う。
牧野も俺も好きすぎてどこか遠慮してさ。
気付いたら牧野が遠くに感じて
もうどうにもならないくらい遠くて
そう思ったら何を話せばいいか分からなくなって
牧野が、会社のだれかと親しげに笑って話してる姿を見たら
俺じゃなくてもいいんだって気付いたんだ。」
静は呆れたようにため息をついて類を諭すように口を開いた。
「ねぇ類、好きだけじゃ何も始まらないわよ。
お互いぶつかり合って分かり合って
そうやって理解していかなくちゃ。
それともそんな簡単に諦めれるほどの想いだったの?」
「静には分からないよ。
手にすれば壊れてしまいそうな・・・
そんな俺たちの関係。
静にも司にも分かりっこない」
そう言うと類は席を立って静に背を向けた。
「類・・・。」
バカな子。
つくしちゃんのためって言うけれど
きっとつくしちゃんの心が離れていくことに耐えれなくて
逃げ出してきたのよね。
カフェオレを飲みながら静は物思いに耽った。
あの日・・・パリのアパートのドアの前に立つ類の姿を見た時
心臓が止まるかと思った。
生気を失くした死人のような瞳で佇んでいた類。
どうしたのか尋ねても答えず
ただただ空を見つめるだけで
そっとしておいた。
ぽつりぽつりとこぼす言葉は
つくしちゃんへの溢れる想いと
壊れそうな類の心。
つくしちゃんが幸せになれるよう
自分はつくしちゃんの元から離れることを選んだって言ってた類は
微笑みながらまるで泣いてるようだった。
私は・・・
正直、このまま類がつくしちゃんを忘れて昔みたいに
私に心寄り添ってくれたならと思ってた。
邪な考えをしてる自分に苦笑するほど
私は類を想っていたのね。
そう気付いたから・・・
だから今はちゃんと類の背中を押して
つくしちゃんとどうなるにしてもけじめをつけて欲しくて
私は自分の気持ちは類に告げずにいるけれど
本当は私も辛いのよ。類・・・。
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