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軌跡

7話

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―2年前―

「まーきの」

待ち合わせ場所の公園のベンチで仕事のスケジュールを確認していると
穏やかで優しい大好きな花沢類の声が聞こえて顔をあげると
ニコニコしてストンと私の隣に腰かけて私が手帳をしまうまでの仕草をじっと見つめてくる。

「そんなジロジロ見られたら恥ずかしいんだけど」

つくしは雑に手帳をバッグに突っ込んだ。

「牧野はさ、何やっても可愛いね」

サラッとそんな言葉を口にする類につくしは赤面する。
毎度こんなパターンなのに毎度赤面しては類がにっこり微笑んで
つくしの手を取り歩き出す。


「ねぇ花沢類はさ・・・」

つくしが類に問いかけた時だった。
複合施設の柱に藤堂静のポスターが貼ってあった。
類はそのポスターをじっと見つめてつくしの声が聞こえてないようだった。

嫌でも気付いてしまう。
類の目が誰に恋してるかってこと。
好きだからこそ気付いてしまうよ。
花沢類・・・。

つくしはぐっとこみ上げる感情を押し殺して
気付かないフリをした。


2人きりで部屋にいるのに
テレビで静さんの報道が出たりすると
一気にその世界に引き込まれてしまう花沢類。


ねぇ花沢類。
私ここにいるよ?
もう私のこと好きじゃないの?
なんて柄にもなく考えちゃってバカみたい。
雑草魂のつくしなのに。
踏まれたってまた起き上がるんだから。
こんなことでへこたれるような女じゃない。

なのに花沢類。
あなただけは違う。
その茶色のビー玉の瞳に私以外を映さないで。
そんな風に女々しい女の自分に気付かされる。


花沢類にふさわしい女性になりたい。
静さんみたいな・・・。

いつしかそんな考えが頭から離れなくなって
いつもどこか静さんと自分を比べては落ち込んで
花沢類をないがしろにしてたかな。

「牧野は俺じゃないほかのだれかを見てる気がする」

そんな言葉を投げかけられて絶句した。

「なんで?そんなわけないじゃん!」

つくしは慌ててそう返事をしたけれど
相変わらず飄々とした類は掴みどころのない態度で微笑んでるだけだった。



どこで道を間違えたかな。

それから類は仕事が忙しいのもあって連絡はほとんどなくなった。
着信が鳴る度に画面の向こうに類がいることを期待しては
違う名前に落ち込んでいた。

「何期待してんのよ私。
花沢類は今、パリだし・・・忙しいんだから
連絡なんてくるはずないのに」

何度も口にした自分への慰めの言葉。

たまにくるメールに
泣いちゃうほど嬉しくて
携帯を握りしめて泣き崩れた日もあった。

「花沢類・・・っ」

携帯を胸に当て嬉しさでいっぱいになった日もある。

それでも感じていた別れの予感。
優しい花沢類は別れを言えずにいたんだよね。
それぐらい恋愛に疎い私でもわかるよ。

私が言ってあげなきゃいけないよね。
でもまだ言えないよ・・・。


だって花沢類を愛してるから。
たとえ愛されてなくても。


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